Fノート
~初タイトル獲得のための提案書~
 

東京国際大学経済学部経済学科
河田ゼミ所属 飯酒盃翔太

目次

1.はじめに
2.GMとは
3.Jリーグとは
4.川崎フロンターレ
5.川崎フロンターレの歴史
6.2016年シーズンの総括
7.2017年シーズンに向けての補強戦略
8.初タイトル獲得へ
9.おわりに


1.はじめに
 私は東京国際大学経済学部経済学科河田ゼミに所属する、飯酒盃翔太と申します。専攻はスポーツ経済コースで、日々河田ゼミにてスポーツアドミニストレーションをオペレーションの観点と、ビジネスの観点から学んでいます。
 今回は、私のホームタウンである神奈川県川崎市に本拠地を置き、J1リーグに所属する川崎フロンターレが初タイトルを獲得するために、どのような戦略を採るべきか、私が川崎フロンターレのGMであると仮定し、スポーツオペレーションの観点から、戦略を練っていきたいと思います。


2.GMとは
 GMはスポーツ組織・団体において欠かすことのできない重要なコンファクターであり、総合プロデューサーです。そんなGMの主な職責は、球団組織・団体の経営分野とチーム編成分野を統括運営・管理することです。GMは、オーナー、CEO(最高経営者)に近い管理下に位置し、マネージャー(監督)は、GMの管理下に位置しています。
 GMの最重要任務は、スポーツビジネスのCORE(根幹)をなす、選手及びチームの商品価値を強化・向上させることです。


3.Jリーグとは
 Jリーグとは、日本のプロサッカークラブを統括する、公益社団法人日本プロサッカーリーグ、および同法人(JFA)が運営するプロサッカーリーグの略称のことです。主管団体はJリーグに加盟する各クラブになります。
 1993年に10クラブで開幕し、1998年までは1部のみの最大で18クラブによって開催されていました。1999年からJリーグ ディビジョン1(現J1リーグ)とJリーグ ディビジョン2(現J2リーグ)の2部制に移行し、2014年にJ3リーグが創設されました。2016年現在では、53クラブがJリーグに所属しています。
 Jリーグは、Jリーグ百年構想や地域密着を掲げ、日本サッカーの水準向上だけでなく、スポーツ文化の振興、心身の健全な発達への寄与、国際親善などを目的としています。


4.川崎フロンターレ
 川崎フロンターレは、100万都市川崎市をホームタウンに「スポーツ文化の振興及びスポーツによる地域社会への貢献」を理念として、1996年11月に設立いたしました。以来、地元密着のための活動を続けながら、青少年の健全な育成や地域の発展等への貢献を目指して、1999年にはJリーグのクラブに加盟しプロサッカー事業の展開、並びにスポーツの普及・振興活動に取組んでおります。

会社名 株式会社川崎フロンターレ
代表 代表取締役社長 藁科義弘
チーム名 川崎フロンターレ
住所 〒213-0013 神奈川県川崎市高津区末長4-8-52
設立年月日 1996年11月21日
資本金 349,375,000円
株主 (川崎市、富士通株式会社、味の素株式会社、株式会社石川商事、
    株式会社神奈川新聞社、株式会社テレビ神奈川、川崎信用金庫、他)
ホームタウン 神奈川県川崎市
ホームグラウンド 川崎市営等々力陸上競技場(川崎市中原区等々力1-1)
名前の由来 フロンターレとは、イタリア語で「正面」「前飾り」の意味。
      これは常に最前線で挑戦し続けるフロンティアスピリッツ、正面から正々堂々と
      戦う姿勢を表現したものです。
エンブレム 川崎市の花「つつじ」、チームマスコットの「イルカ」、
      チームカラーをあしらい、世界に向けて開かれた活力と、
      魅力ある臨海都市「川崎」をシンボライズしたマークです。
マスコット 「先進技術を生み出す賢さ、臨海都市の海」をシンボライズし、
      フロンターレの目指すスピード、親しみやすさを表現する「イルカ」を
      モチーフにしました。名前は一般公募で選ばれた「ふろん太」です。①


5.川崎フロンターレの歴史
 1995年に創部された「富士通サッカー部」が前身であり、1972年に日本サッカーリーグへ昇格しました。1996年に「富士通川崎フットボールクラブ」へ改称し、同年11月21日に運営会社となる「富士通川崎スポーツマネジメント株式会社」を設立しました。その後1997年にJリーグ準会員となり、名称が公募によって「川崎フロンターレ」に決定しました。

年度別成績
1999年 J2リーグ加盟 J2リーグ優勝(J1リーグ昇格)
2000年 J1リーグ16位(J2リーグ降格)、Jリーグナビスコカップ準優勝
2001年 J2リーグ7位、天皇杯ベスト4
2002年 J2リーグ4位、天皇杯ベスト8
2003年 J2リーグ3位
2004年 J2リーグ優勝(J1リーグ昇格)
2005年 J1リーグ8位、天皇杯ベスト8
2006年 J1リーグ2位、Jリーグナビスコカップベスト4
2007年 J1リーグ5位、Jリーグヤマザキナビスコカップ準優勝、天皇杯ベスト4、
    AFCチャンピオンズリーグベスト8
2008年 J1リーグ2位
2009年 J1リーグ2位、Jリーグヤマザキナビスコカップ準優勝、天皇杯ベスト8、
    AFCチャンピオンズリーグベスト8
2010年 J1リーグ5位、Jリーグヤマザキナビスコカップベスト4、
    AFCチャンピオンズリーグ出場
2011年 J1リーグ11位
2012年 J1リーグ8位
2013年 J1リーグ3位、Jリーグヤマザキナビスコカップベスト4、天皇杯ベスト8
2014年 J1リーグ6位、Jリーグヤマザキナビスコカップベスト4、
    AFCチャンピオンズリーグベスト16
2015年 J1リーグ6位

 上記の年度別成績からも分かるように、川崎フロンターレはJ1リーグでのタイトルを獲得したことがないため、初タイトル獲得がクラブ・選手・サポーターの悲願となっています。


6.2016年シーズン総括

・2016年シーズン結果
 J1リーグ3位(1st 2位、2st 3位)
 JリーグYBCルヴァンカップ 予選敗退
 天皇杯 準優勝

・2016年シーズン在籍一覧
 GK1 / チョン ソンリョン DF2 / 登里享平 DF3 / 奈良竜樹 DF4 / 井川祐輔
 MF5 / 谷口彰悟 MF6 / 田坂祐介 MF7 / 橋本晃司 DF8 / 小宮山尊信FW9 / 森本貴幸
 MF10 / 大島僚太 FW11 / 小林悠 FW13 / 大久保嘉人 MF14 / 中村憲剛
 MF15 / 原川力 MF16 / 長谷川竜也 DF17 / 武岡優斗 DF18 / エウシーニョ
 MF19 / 森谷賢太郎 DF20 / 車屋紳太郎  MF21 / エドゥアルド ネット
 MF22 / 中野嘉大 DF23 / エドゥアルド GK24 / 安藤駿介 MF25 / 狩野健太
 MF26 / 三好康児 FW27 / 大塚翔平 DF28 / 板倉滉 GK29 / 高木駿
 GK30 / 新井章太 MF31 / 田中碧  MF32 / デューク カルロス
 監督 / 風間八宏
 コーチ / 鬼木達 コーチ / 久野智昭 コーチ / 森一哉 GKコーチ / 菊池新吉
 TRコーチ / 川崎英正 ドクター / 岩噌弘志 ドクター / 後藤秀隆
 Aトレーナー / 池田善憲 Aトレーナー / 千葉千里 トレーナー / 高田圭介
 トレーナー / 伊東孝晴 ホペイロ / 伊藤浩之 スカウト / 向島建 スカウト / 伊藤宏樹
 通訳 / 金明豪 通訳 / 中山和也
 主務 / 清水泰博 副務 / 十時剛
 マスコット / ふろん太 マスコット / カブレラ マスコット / ワルンタ ②

・2016年シーズン総括
 開幕から醍醐味である魅力的なサッカーを展開し、初優勝に向け上々のスタートを切りました。開幕戦では前年度の年間チャンピオンである、サンフレッチェ広島に競り勝ち、その後は打ち合いの試合が続く中、順調に勝ち点を積み上げ、第7節の時点では負けなしの首位に位置していました。第8節の浦和レッズとの試合で初黒星を喫し首位の座を明け渡してしまいますが、見事に立て直し1stステージ全17試合をわずか1敗の2位で折り返しました。
 2stも勢いは止まらず、小林選手の7試合連続ゴールなどもあり、上位に位置付けていましたが、怪我や疲労の影響から終盤に失速し2stを3位で終え、年間勝ち点2位でチャンピオンシップへの進出を決めました。
 年間勝ち点1位の浦和レッズが待つ決勝への切符をかけ、年間勝ち点2位の川崎フロンターレと年間勝ち点3位の鹿島アントラーズが、チャンピオンシップ準決勝を戦いました。結果は、後半に値千金のゴールを決めた鹿島アントラーズが勝利し、決勝へコマを進めました。川崎フロンターレは、この結果によりJ1リーグ3位が確定し、悲願の初タイトルにまたも届きませんでした。
 年間勝ち点3位の鹿島アントラーズが優勝し終えた2016年のリーグ戦ですが、2016年シーズンの最後に天皇杯のタイトルをかけた戦いが残されています。
 川崎フロンターレは、ラウンド16で死闘の末、浦和レッズに競り勝ち準々決勝への進出を決めていました。準々決勝の相手は多摩川を挟んだライバルチームであるFC東京との“多摩川クラシコ”です。終始ゲームを支配した川崎フロンターレが勝利し、準決勝への進出を決めました。準決勝の大宮アルディージャとの試合では、終盤に得点を挙げた川崎フロンターレが勝利を掴み、天皇杯決勝への切符を掴みました。
 天皇杯決勝の相手は、奇しくもリーグ優勝への道を阻んだ鹿島アントラーズです。悲願の初タイトル獲得に燃える川崎フロンターレは、サポーターからの大声援を後押しに得点を狙いますが、前半終了直前に失点をしてしまいます。攻めるしかない川崎フロンターレは、後半の早い段階で一瞬のチャンスをものにし同点に追いつきます。その後は、ポスト直撃のシュートなど一進一退の攻防が続きますが、両者とも得点を挙げられず90分が経過し後半終了。両者の維持と維持のぶつかり合いは、大会規定により延長戦によって勝敗が決まります。延長前半、先手を取った鹿島アントラーズが勝ち越しゴールを決めスコアを2-1とします。後がない川崎フロンターレは、攻め立てますが1点が遠くタイムアップ。鹿島アントラーズが、リーグ戦に続き天皇杯のタイトルを獲得しました。川崎フロンターレは、悲願の初タイトルにまたしても、あと一歩届きませんでした。
 2016年シーズンのこのような結果を踏まえ、いま川崎フロンターレに必要なのは、
 ・タイトル獲得経験のある選手並びに監督
 ・個で違いを生み出せる選手
 ・質を落とさない選手層
であると私は確信しています。


7.2017年シーズンに向けての補強戦略

 IN・OUT(2017.1.5現在)
 監督
  風間八宏監督(退任→名古屋グランパス就任)
  鬼木達監督(就任←コーチから昇格)

 新加入選手
  知念慶選手 愛知学院大学(入団内定)
  田中碧選手 川崎フロンターレU-18(昇格内定)
  阿部浩之選手 ガンバ大阪(完全移籍)
  家長昭博選手 大宮アルディージャ(完全移籍)
  舞行龍ジェームズ選手 アルビレックス新潟(完全移籍)

 退団選手
  大久保義人選手(完全移籍→FC東京)
  原川力選手(レンタル移籍→サガン鳥栖)
  中野嘉大選手(レンタル移籍→ベガルタ仙台)
  髙木駿選手(完全移籍→大分トリニータ)

 (注)2017.1.5現在、KAWASAKI FRONTARE OFFICIAL WEBSITE上で公式リリース。

・新加入選手について
 阿部選手は、ガンバ大阪が3冠(リーグ・カップ・天皇杯)を達成した時の中心選手で、影のMVPと言われた選手です。サイドハーフの位置から攻守に渡る豊富な運動量と確かな技術が持ち味です。ガンバ大阪時代のタイトル獲得の経験が、川崎フロンターレに大きなメリットをもたらす存在です。
 家長選手は、日本でも屈指の技術を誇るレフティーの選手です。退団する大久保選手の穴を感じさせない活躍を期待されていますが、それと同時にチーム最年長である中村選手に代わる攻撃の中心としての役割を担える選手です。ポテンシャルは非常に高い選手なので、チームにフィットすれば大きな戦力アップに繋がります。
 舞行龍選手は、ニュージーランド出身のディフェンダーです。空中戦を得意としています。センターバックの自陣空中戦の勝率が良くなかった川崎フロンターレ(谷口選手61.9%24位、エドゥアルド選手59.7%31位、舞行龍選手73.3%2位)にとって貴重な存在になります。

・タイトル獲得経験のある選手並び監督
 風間監督が退任し、一番悩ましい問題であった監督問題。結末は内部昇格という形で、鬼木コーチが風間監督の後を引き継ぎ監督になりました。鬼木監督は、Jリーグの監督が初挑戦となるので、計算しにくい部分も多く一種の賭けに思えるかもしれませんが、私もこの決定には賛成です。
 タイトルを獲得したことのある監督、優勝させることのできる監督を招聘することが、タイトルへの一番の近道であることは間違いないのですが、日本のJリーグには確立された地位の名将が不在のため、チームを作り戦力を強化し優勝するしかありません。川崎フロンターレには、退任した風間監督が築き上げた独自のスタイルがあり、タイトルまであと一歩のところまで迫っています。なので、その独自スタイルを継承しつつ、レベルアップさせることのできる存在がベストなのです。
 鬼木監督は、選手時代は川崎フロンターレで引退をしましたが、前所属チームは鹿島アントラーズであり、常勝軍団のスピリッツも兼ね備えています。なので、外部から招聘するよりも、川崎フロンターレを熟知している新監督のほうが、タイトルには近いと考えます。
 また、タイトル獲得経験のある選手として阿部選手を獲得しましたが、あと数名このような経験を持った選手が必要だと考えます。
 そこで私が獲得を勧める選手は、浦和レッズに所属する那須大輔選手です。那須選手は、横浜Fマリノス時代に2回のリーグ優勝、その後も各チームで3回のカップ戦優勝の経験があります。また、35歳とベテランの選手なのですが、ベテランらしい勝負強さを兼ね備えている選手なので、川崎フロンターレに足りないものを補完してくれる存在だと考えています。浦和レッズでも貴重な存在として重宝されている選手ですが、2016年シーズンは新戦力の台頭によって、出場試合数が前年と比べて約半分しか無かったので、獲得のチャンスはあるとみています。

・個で違いを生み出せる選手
 パスを繋ぎ相手を崩す川崎フロンターレにとって、ドリブルによって個で違いを生み出せる選手は非常に大事なピースとなってきます。数シーズン前まではレナト選手というJ屈指のドリブラーがいましたが、レナト選手が移籍してしまった後、個の力で違いを生み出せる選手がいなくなってしまったのが、勝ちきれない要因であったりします。
 個で違いを生み出すドリブラーと言っても、ドリブラーは大きく分けて2種類のタイプに分けられます。広大なスペースを生かしスピードで相手を抜き去るタイプと技術とタイミングそして一瞬のスピードで相手を抜くタイプに分けられ、川崎フロンターレに必要なタイプは後者です。
 しかし、この補強ポイントは必ずしも外部から獲得しなくても、2016年シーズン台頭を現した三好選手の成長に期待するのも面白いかもしれません。三好選手は、まだ19歳と若くU-19日本代表にも選出されている将来有望な選手です。また、クラブの下部組織出身の選手であるので、商品価値としても高く、これからの川崎フロンターレを背負っていける選手です。川崎のメッシと呼ばれているだけあって、狭いスペースでも安定した技術を発揮できる選手なので、試合を通じて成長し、個で違いを生み出せる選手に成り得る存在です。
 外部チームからの補強を考えるならば、横浜Fマリノスに所属する斎藤学選手の獲得が一番の打開策になります。齋藤選手は日本を代表するドリブラーであり、数少ない違いを生み出せる選手にあたります。そんな齋藤選手は横浜Fマリノスに残留するか海外または国内移籍をするか検討していると聞きます。日本代表クラスの選手であり、補強ポイントに合致する選手なので、獲得すべき選手であると考えます。


8.初タイトル獲得へ
 毎年、あと一歩のところでタイトルを逃し、シルバーコレクターという有り難くない称号を手にしてしまっている川崎フロンターレにとって、タイトル奪取は至上命題となっています。そのために、優勝経験のある人材、個人の力で勝利をもたらせられる人材、幅広い選手層が必要なのです。
 Jリーグ屈指のプレーヤーである、キャプテンの中村憲剛選手も今年で37歳となります。この川崎一筋のバンディエラと共に、初タイトルを掲げることが多くのサポーターの願いでもあります。
 そのためにも、2016年シーズン一番魅力的なサッカーをしていたと評されるチームにプラスアルファをし、2017年シーズンこそ悲願の初タイトル獲得へ向かっていかなければなりません。
 上記に記述した選手や、同タイプの選手を獲得することで、タイトルを獲得できると私は確信しています。


9.おわりに
 今回のご提案は、僭越ではございますが、川崎フロンターレのファンである大学生の私が外部から見た視点での考察とさせていただきました。現場からの視点は、また違った角度からの視点があることは重々承知しております。良いチームというのは、一つ一つのピースが、パズルのように上手く重なり合って生まれるものです。川崎フロンターレが、より良いチームとなり、悲願の初タイトルを獲得することを心から願っています。
 御耳障りの点が多々あったとは思いますが、拝読ありがとうございました。なお、お気づきの点が御座いましたら、ご指導のほど宜しくお願い申し上げます。

① http://www.frontale.co.jp/about/club_profile.html
② http://www.frontale.co.jp/profile/2016/index.html

文責者 飯酒盃翔太